谷尻 誠 のインタビュー動画 谷尻 誠 のインタビュー動画
The IDEAL BAG
Vol. 01
谷尻 誠
Name
MAKOTO TANIJIRI
Job
ARCHITECT

家と一緒でアドレス設定できる鞄 谷尻 誠 / 建築家

“考え方を建築する”建築家と評される谷尻誠さん。
モットーとする“考え続けること”
“動き続けること”“楽しみ続けること”
を仕事、暮らしに置いて実践する彼が考える
理想の鞄のカタチに迫ります。

Profile

谷尻誠 /1974年、広島県生まれ。建築家/起業家。SUPPOSE DESIGN CO.,Ltd.代表取締役。都市計画、建築、インテリア、プロダクトに関する企画、設計、監理、コンサルティングを行う傍ら、社食堂やBURD BATH&KIOSKを開業、絶景不動産、21世紀工務店、未来創作所、tecture、Bypassなどを起業する。著書に『1000%の建築』『談談妄想』『CHANGE 未来を変える、これからの働き方』など。

インタビューシーン1

仕事のこと

”考え方を建築する”建築家。谷尻さんはこんな風に評されることが多い印象です。まずはじめに、ご自身が思う、クリエイターの定義をお聞かせください。

考えることをやめない。僕がいちばん大切にしているのはこの考え方です。考えることをやめない限り、新しいアイデアを生みだし、カタチにすることができると思うので。自分の興味のあること、好きなこと、社会に届くモノ・コトを意識して、フットワーク軽く動くようにしています。

”フットワーク軽く”なんですね。

考えたアイデアをどれだけ早くカタチにするか、近年は特に、スピード感をすごく意識していて。今日、撮影しているこの「社食堂」も実質3ヵ月で作りました。”会社の食堂”と”社会の食堂”を掛け合わせたダイニングカフェを作ったら面白そうっていうアイデアからスタートし、会社のスタッフを集めて会議。飲食店をやったことはなかったんですが、それでもとにかく動いちゃう。カタチにし始めると、思考がクリアになっていきますし、何よりも楽しい。ただ、引っ越す時期が早すぎて、当初はトイレもなかったんですよ。近所のコンビニのトイレをお借りしてました(笑)。やれるかやれないかだと不満も出てきがちですが、やるしかないと不満も言えなくなるもの。後戻りできなくしちゃうのが好きなんでしょうね。もちろん、楽しみながら。

「社食堂」のコンセプト、とても面白いと思います。

ありがとうございます。「細胞をデザインする」っていうコンセプトのもと、毎日食べたくなる”おかん料理”を提供しています。誰でも気軽に訪れて、自由に過ごすことができるので、毎日いろんな人が来てくれます。もちろん、ご近所の皆さんも。仕切りのない空間でゆるやかに繋がり合えるのって楽しそうだと思いませんか?仕事と生活、オンとオフの境界線をできるだけ作らないように心がけたほうが、僕自身にとっては自分らしいなぁと思っています。ほら、何事も定義を曖昧にしたほうが複眼的な視点で物事を観察したり、考察できますから。

インタビューシーン2

改めて、お聞きしても良いですか? なぜ建築家になろうと思ったのでしょう?

さかのぼりますね(笑)。僕の実家は古い長屋で、それこそ五右衛門風呂で、家の中で傘をささないと部屋の行き来ができないような家だったんです。その不自由さがストレスで、小さい頃は大工になってそれを払拭するような家を建てたいと思っていて。このあたりの気持ちが根っこにあります。加えて話すと、高校時代、授業中に『ツルモク独身寮』という漫画を読み、インテリアデザイナーという仕事を知り、興味を持ったこと。専門学校を卒業して、この業界の隅っこに入りました。そこからのストーリーは長いので割愛しますね(笑)

谷尻さんの仕事観についても伺いたいです。

仕事についてお話しすると、すごく個人的で”小さな提案”でもいいと思っていて。ただ、社会に届くものであることは常に意識しています。若い頃は利己的で自分の満足を求めていたけれど、だんだん、自分の満足よりも自分がどういう風に社会に役立っているのか、求められて仕事をする喜びのほうに価値が大きくシフトしたように思います。今は利他的に、自分たちが考えていることが誰かに必要とされたり、役に立ったり、新しい価値を生んだりしてほしいと思っていますね。さまざまな業界のいろいろな人に生かされながらの人生なので”他人の七光り”なんです。

暮らしのこと

ここからは”暮らし”についてお伺いします。谷尻さんが思う、心地よい暮らしとは?

毎日楽しむこと。これに尽きる気がしますね。すでにお話したように、仕事と生活の境界線をできるだけ曖昧にしたいなぁと思っているので、人に説明する時は「365連休です」と言うようにしています。

365連休、ですか!?

そう、365連休です。こういう気持ちで毎日過ごしたほうが楽しそうでしょ?加えてお話しすると、日常の些細なことに意識を持つように心がけています。その連続でしかセンスは養われないと思うので。だからできるだけ、美しいモノをそばに置き、暮らしを楽しむようにしています。作ったものを育てる。こんな感覚も大切にしていますね。

いま、谷尻さんが情熱を注いでいることはありますか?

自分の家を作ったので、いちばんはその家づくりでしょうね。なんでも自分で作りたいと思うタイプなので、スピーカーを作ってみたり真空管アンプを作ってみたり、照明を作ってみたり……ほかにもいろいろなものを手作りしていますよ。ガラス作家さんと共同でオブジェも作りました。何かを作っている時が幸せですね。作るものはモノでも場でも空間でも、それこそキャンプ場でもなんでも。

キャンプ場ですか?

子供が生まれてから、できるだけ自然の中で不自由な体験をさせたいと思っていて、いまじつはキャンプにハマっていまして。忙しい合間をぬって、隙あらば子供を連れてキャンプに行きます。好きなことが仕事につながると”なお楽しい”ので、コロナ禍に資金調達してキャンプ関連の事業、キャンプ場を経営することになりました。だからキャンプはこれから、家族サービスでもありビジネスでもあるんです。一緒に動いてくれる仲間が周りに多くいるのは財産です。

半径5mの暮らしをみたとき、心地よい暮らしをキープするための心がけ、毎日のルーティンはありますか?

最近は早起きして、掃き掃除をすることかなぁ。植物をたくさん植えていて落ち葉の量がすごいので、毎日掃き掃除を30分間。朝の空気は清々しくて気持ちいいですし、ちょっとした運動にもなる。普通ですみません。都市生活を楽しんでいます。あとは焚き火。家を建てて暖炉を作ったので、夜は薪をくべながらボーッとしています。美味しい毎日の食事は料理家の妻のおかげ。「細胞の原料は食事」という妻の名言のもと、口に入れるものにはこだわるようにしています。

鞄のこと

ー本稿のタイトルは「ライフスタイルクリエイターズの理想のバッグ」です。普段、鞄にどんなことを求めていますか?

収納力ですかね。ポケットがたくさんある鞄が好みです。アドレスを設定できるので。「あなたはここね、あなたはここね」と整理できると、僕は幸せです(笑)。だからアドレス設定できる鞄がいいなと思います。この考え方は家と一緒です。一緒で出て行って戻る場所があるっていう。

ーよく使う鞄のカタチはありますか?

以前はトートが好きで使ってたんですけど、子供が生まれて両手は必要になったので、背負うようになりました。これまでの鞄の変遷をたどると、ショルダータイプが一番長かったと思います。トートでありながら、斜めがけできるのはベストですね。自転車も乗るので。ちなみにまだ、革のバックは使ったことはないんです。大人になってきたので、使う可能性はこれから十分にあると思いますよ。

ー「旅と鞄」をテーマとした時、旅に持っていく時の鞄はなんでしょう?

国内はバックパック、海外はトランクケースです。国内は最小限の荷物で行こうとするのでバックパックに詰め込んじゃう。海外は宿泊数が多くなってくるので、ある程度生活用品も備えるので、仕方なくトランクです。でも海外も3泊ぐらいなら、バックパックで行っちゃいますね。飛行機にトランクを預けるのが嫌なので、機内に持ち込めるサイズで。とにかく身軽でいたいんです。何かと忘れっぽい性格なので鞄は1つです。1つだったら忘れませんから(笑)

ー谷尻さんにとって理想の鞄とは?

洋服に合うこと。僕だけに限らず、いろんなスタイルに合うのは結構大事なことだと思いますね。靴と鞄は最後に身につけるじゃないですか。それで、決まれば、適当なパンツやシャツを着てても許される気がします。スタイルに合う、いい靴といい鞄されあれば、雰囲気が出来上がるので。だから鞄と靴は重要だと思いますね。その人のスタイルを決めるので。

ー最後にFAROにひと言コメントをお願いします。

スタイリッシュでとっても良いと思います。何事も洗練してほしいと思うタイプなので、そういう雰囲気が作られてるのは、すごくいいなと思います。さりげなく職人による手作りっていうところも良いですね。さりげなさって、仕事でも暮らしでも大切ですよね。